LIFEとは何か

主体形成と生活経営

p.9-10生活の三重構造

「生命」「暮らし」「人生」といった3側面の意味合いを、単独で、あるいは複合的に包含して用いる。生活者の視座に立って、その生活実態に即した生活活動(行為)を捉えるとき、生活は、「生命・暮らし・人生」という三重構造をなす「生活(life)」として幅広く、多角的に捉えていく必要がある。


P.10 表1−1 生活の三重構造

人間の存在 生活主体の要素 「生活(Life)」:その活動(行為)
生理的・生殖的存在 生命の維持・更新 「生命」「命」:生存
社会的・経済的存在 生計の維持・更新 「暮らし」」:整形、暮らし向き
精神的・文化的存在 高次の人間的諸活動 「人生」:生き方、生きざま、自己実現、生きがい


p10 生活活動の領域

生活は、一般的に、公的生活と私的生活に大きく分類される。しかし、私たちの日常の生活展開の場に視点をおくと、公的生活領域(社会生活)、共的生活領域(地域生活)、私的生活領域(家族生活)に分類して捉える方が現実的であろう。


p11-12 生活を説明する軸

森岡(1993)は、生活とは一定の構造やスタイルをもちつつ、時間の範疇においてその意味を実現していくものであり、ある時点の人々の生活は、「同時に過去の生活を背負い、また未来の生活をはらんでいる」と述べる。わたしたちは、社会的背景や他者との関わりに影響を受けながら様々な生活領域における地位や役割の取得・保持・離脱・逸脱といった複数の経歴をもち(中道、1997a)、さらに未来に向かって新たな経歴を蓄積し、人生行路(ライフコース軌道)を模索しながら成長している。個々人のライフコース軌道の差異を生じる基本的な要素として、(1)歴史的・地理的な時空間上の位置(歴史的・文化的背景)、(2)他者との社会関係(社会的統合・内面化)、(3)個人の自己制御・人間行為力(個人の目標志向性)、(4)年齢・時代・コーホート(同一年齢の人々の集合体)の交互作用などによる生活のタイミング(戦略的適応)が上げられる(Giele, Elder 2003, 48-52)。これらの要素を軸にして、新たに組織化を試みていく生活を説明することが可能になる。

p14
生活主体を取り巻くさまざまな生活環境要素は、社会主体であるヒト(Man)と、(1)自然(Nature)、(4)ヒト(Man)、(2)モノ(Material)、(3)コト(Matter)、(5)ココロ(Mind)との五つの生活システム的な関係性に分けられる(長嶋2000、、米山1983)。

  1. 生命(生理的・生殖的存在)→ヒトと自然(生活主体の自己回復や再生産を促進すること、エコロジー
  2. 暮らし(社会的・経済的存在)→モノ(生計を維持するための所得が保障され、衣食住環境などの暮らしの安定を図るための物的生活環境要素、特に経済資源は、生活空間・生活時間と密接な関連をもちながら生活水準を決定する)、コト(暮らしの安定を図るために必要な安全性・利便性とそれらの情報授受システムなど、わたしたちの生活行動とその制約関係を支える生活環境要素)
  3. 人生→ヒトとヒト(インフォーマル・フォーマルな関係からなる個人のネットワーク形成環境)、ヒトとココロ(社会の規範や価値を内面化して具体的な生活場面に適応していくために必要な主体要素の醸成や、自己の精神的な意識生成をサポートする生活環境要素)