コトとデザインとの関係はいかに(問うてみたが答えはない)

ソーシャルイノベーションデザイン―日立デザインの挑戦を読んだ。
 日立社のデザインの流れ、デザインの本質、デザイン組織、デザインの進め方などが分かる。良書。


コトづくりに言及している部分。

p29

・・・・経験デザインの方法論が有効になる。つまり、デザインの対象を物(モノ)とは考えず、「顧客への経験・知識の提供」などとして捉え、人間を中心に、状況に応じてニーズを充足していくプロセスとして考えていくことである。これは一昔前に言われたような、提供者主導の「コト(イベント)のデザイン」ではない。むしろ文脈に応じて変化する「場」のデザインであるといってよい。

おそらくここでは、「コト」→提供者の設定した通りの行為を顧客や利用者に行わさせる(大枠も細部も提供者)
         「場」→場は提供者が設定するが、その中で利用者が柔軟に行為を行える(大枠は提供者、細部は利用者)


しかし重要なのは、柔軟性以前のデザインの目的だ。

p.5
 デザインは、常にある文脈や関係性の中で創り出される。デザイナーは対象となるユーザーや使用環境などを想定し、(1)その生活習慣や価値観にあった、(2)使い勝手のよい、(3)美しいデザインを創り出す。当然、対象や条件が変われば、新たなデザインが生まれる。優れたデザインは、想定されたコンテキストでもっとも輝き、、人、場、時が変わると輝きを失う。

括弧に入った数字は本文にはないが、目的となりそうなものなのでつけた。(2)(3)は従来からあるデザインの枠内に入りそうだ。もちろん、手法的な変化は起こっているだろうが。とすると、(1)が目的として最も重要となる。

それについては、

p.5
 ユーザーとの距離が近いデザイン活動が、デザインの背後にある潜在的欲求の文脈を見つけ、、それらを紡ぎ、束ねることで、より多くの人が共感する生活ストーリーやシーンを描くことができるからだ。

 潜在的欲求と文脈の同時的発見→紡ぎ、束ねる→広範な生活への適用なのが、その目的は潜在的欲求の充足だが、その欲求は何のために充足されるべきか?

p.6
 インハウスデザイナーは、従来の商品に付加価値を与える「How]のデザインに長けているとされてきたが、それに加え、今後は感動を生むサービスや事業自体を作る「What]のデザインに挑戦する時を迎えている。

 感動だろうか。


唐突だが、この本を読んで思ったことは、

 デザインもコトづくりも、人間の分析が肝だということ。人間全体の分析と、個々の人の分析を同時並行的に進め、相互交流させること。
 1)すべての人間に共通の要因。知(→思考プロセス)、情(→感覚、感情)、意(→生活スタイルや意識)について、文脈カテゴリーごとに考える。
   スクリプト分析のグーグル検索結果
 心理学系のスクリプトの検索結果

 2)個別の人間の経験からの抽出
  観察。フォーカスグループ。 プロトコル分析のグーグル検索結果